つれづれ memo & feel

旅の記録と日常の出来事をメモする

「そんかとくか」と「うそかまことか」それが問題

招待券を頂いたので、東京国際フォーラムの「相田みつを美術館」に行ってきました。
相田みつをについては知識が乏しく、「詩人なのになぜ美術館なの?」と思っていました。そこで、書家が本業だということを初めて知ったような次第です。
字については、何気なく書いたような字に味がある。書家ということを聞いて、基本があってそれも達人という域になることで、あのような字が書けるのでしょう。


全体を通じて感じたのは、相田みつをは正直な人だ、そしてそれを臆面もなく表に出せる強い人だと。
いくつか、心に残る作品がありました。


これは、気に入ったと言うか、考えていると良く分からなくなったので頭の中に残った。

 「そんかとくか
  人間のものさし 
  うそかまことか
  仏さまのものさし」

損得勘定だけで世の中を見るといけないよ、ということになるのだろう。
しかし、そんなに単純な理解で良いのだろうか。
損と得は良く分かるが、嘘と真には良く分からないところがある。
おそらく、人間には精神と物質という二つの面があり、物質面では損得勘定を働かせ、精神面では嘘か真かのものさしを働かすことになるのだろう。まだ良く分からない。しばらく頭に置いておこう。


子供との関係についての作品に感じるものがあった。

 「どのような道をどように歩くとも
  いのちいっぱいに
  生きればいいぞ」


 「欠点まるかかえで信ずる」


 「育てたように子は育つ」

「子は育つ」が、親の影響はそれほど大きくはないような気がする。ある教職の方が自分の子に対しても「教えられなかったものが、子供らの個性です」と言われたことを思い出す。


子供に対して分かっていてもなかなかできないことが、次にでています。
そこには、先の「そんかとくか・・」の意味も込められているような気がする。

 「ある母親が息子の就職の事で私の所へ来ました。
  その母親の言い分


   ・我が子にはなるべく骨を折らせたくない。
   ・我が子には一生安楽な生活をさせたい。
   ・途中で倒産なんて不安な思いをさせたくない。


  要するに自分の子だけは 楽していっぱいお金を貰って
  カッコいい生活をさせたい。
  この母親の心の底には『親の苦労は子にさせたくない』
  と言う切ない気持ちが有る訳で
  一概に否定出来ませんが こう言う母親のエゴが結果的には
  子供自身をみんな駄目にしていると
  私は断言いたします。


  そこで私は世の母親達へ次の事を訴えます。


   ・楽してカッコよければ幸せかと言う事
   ・逆に骨を折る事は不孝かという事
   ・人間の本当の幸せは いったいなんだと言う事。


  私は人間の本当の幸せとは『充実感の有る行き方』だと思っています。
  骨を折らない,努力を必要としない仕事に 充実感は有りません。


   ・ごく普通の順序で行く限り子供は 親亡き後一人で生きて行くという事
   ・親亡き後どんな苦労にぶつかるか分らぬと言う事


   ・子供は将来を生きると言う事。
   ・そして将来の事は何人にも予想がつかぬという事


  我が子には苦労させたくないと母親のエゴでいくら思っても 
  親亡き後 親よりも苦労する事がいっぱい有るかも知れない。


  そのように腹を据えて 将来を見透かすべきです。
  たとえ親よりも苦労する事が有っても 親よりも逞しく親よりも粘り強く
  人生を生き抜いてゆく力と
  知恵とを子供に与えておく それが一番正しい親の愛情であり 
  義務で有ると私は思います。」

分かっていてもできない。
それでも良いのでしょう。
分かっていないより、一歩進んでいるのですから。
できなくても、一所懸命に生きていれば。
それらを、次のような作品で感じます。

 「毎日少しずつ 
  それがなかなか 
  できねんだなあ」


 「ぐちをこぼしたっていいがな
  弱音を吐いたっていいがな
  人間だもの
  たまには 涙をみせたっていいがな
  生きているんだもの」


 「どうもがいてもだめなときがある
  ただ手を合わせる以外には方法がない時がある
  ほんとうの眼がひらくのはその時だ」



自分と向き合う作品に癒されるものが多い。
それらの言葉に自分を重ねて、うなずいたり、教えられたりする。

 「あなたがそこにただいるだけで
  その場の空気があかるくなる
  あなたがそこにただいるだけで
  みんなのこころがやすらぐ
  そんなあなたにわたしもなりたい」


 「あなたのこころがきれいだから
  なんでもきれいに
  みえるんだなあ」


 「いいことは おかげさま
  わるいことは 身から出たさび」


 「よくまわっているほど
  コマはしずかなんだな」


 「あんなにしてやったのに
  『のに』がつくとぐちが出る」



いつまで覚えているか分からないが、頭の片隅に残っていてある日ふと浮かんでくる。
そんな言葉たちに出会えたと思う。