ピタゴラスイッチと意味深い言葉
物理的なチカラが連鎖していくピタゴラスイッチ(ピタゴラ装置ともいう)は、いつも見入ってしまう。ドミノ倒しのように連鎖がうまく続くのかという思いと、次はどんな仕掛けなのだろうかというワクワク感がある。今日見たものは、その中でも規模として最大のものだろう。仕掛けも盛り沢山である。
大仕掛けなのだが、どこか繊細さを感じる。ところどころに人が出てくるが、それが最後のオチに繋がる。流れている音楽も小気味良く、なかなか良い。それもそのはずで、これは ”OK Go” というロックバンドのプロモーションビデオなのである。
彼らのプロフィールを見ると、あることを思い出した。
OK Go は、アメリカ合衆国・シカゴ出身の4人組ロックバンド。1999年結成。
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2ndアルバム『Oh No』に収録された「ヒア・イット・ゴーズ・アゲイン」のPVで数台のトレッドミル(ウォーキングマシン)を利用しコミカルに踊るメンバーの姿が話題を呼び、2007年度のグラミー賞を受賞。
【オーケー・ゴー - Wikipedia】
そう、このウォーキングマシンを使ったダンスをYouTubeで見たことがある。
このビデオを見る限り、ロックバンドというよりコミックバンドに見える。曲よりも、そのコミカルなパーフォーマンスが面白くて、それを覚えていた。
ところで、ピタゴラスイッチの映像に流れている曲のタイトルは「This Too Shall Pass」、訳すと「これも過ぎ去るもの」となる。どのような意味があるのだろうかと思って調べてみた。
この言葉は、ユダヤ経典の中にある「ダビデの指輪」に由来するようだ。その昔、ダビデ王が宮中の細工師に「ある時は、勝利の喜びで高慢になろうとする気持を戒め、また絶望に陥った時は、勇気と希望を与える言葉」を彫った指輪を作りなさいと命じた。悩んだ細工師がソロモン王子に助けを求めた時、「This, too, shall pass away. (これもまた、過ぎていく)」という言葉を王子が与えた。
要は、喜びも苦しみも、いつかは過ぎ去るものだということである。苦悩しているときの慰め、そして幸せに溺れているときの戒めにもなる。
ここまでくると、平家物語にある「諸行無常」を連想する。この世のすべては常に変化していくものだということでは本質的に同じである。しかし「盛者必衰の理」と、こちらの方はおごれる者への戒めが中心であり、そこに日本的なものを感じる。一方、同じ材料からできる言葉でも、欧米では慰めや希望を与える方に傾くような気がする。
この辺の感触は、以前ふれた「危機感駆動型の日本と希望駆動型の米国」という図式に通じるところがある。
いずれにせよ、この「This too shall pass. 」は苦しいときに思い出したい言葉である。おそらく、その前に「ケ・セラ・セラ」と言っているのだろうが。